「雛人形は母方の実家が用意するもの」という通説は、実は令和の今、必ずしも正解ではありません。人形屋ホンポの成嶋です。店頭でも毎年必ずご相談いただくこのデリケートな問題。大切なのは「誰が金を出すか」ではなく「どう祝うか」です。義実家とも円満に、そして自分たちが本当に欲しいお雛様を迎えるための、プロ直伝の進め方をお伝えします。
1. 「母方の実家」は昔の話?現代の購入事情
かつては「嫁入り道具」の一環として、母方の実家が雛人形を用意するのが一般的でした。しかし、核家族化や住宅事情の変化により、その常識は大きく変わっています。
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私の肌感覚ではありますが、現在の購入パターンの内訳は以下のようになっています。
・**母方の実家**: 約40%
・**両家で折半**: 約30%
・**若夫婦自身で購入**: 約30%
特に最近増えているのが、「自分たちの好みのものを自分たちで買いたい(あるいは資金だけ援助してもらう)」というケースです。「伝統だから」と無理に母方に負担をさせたり、逆に父方(義実家)からの「買ってあげたい」という申し出を無下にするのは避けたいところ。まずは「正解は一つではない」ことを認識しましょう。
2. 揉めないための事前リサーチと役割分担
トラブルの最大の原因は「事後報告」です。「母方が買ってくれた」と後から伝えたら、義実家も用意しようとしていた……というケースが一番気まずいものです。
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**スムーズに進めるための3ステップ**
1. **夫婦で意思統一**: まずは「どんな人形がいいか」「誰に買ってほしいか(自分たちで買いたいか)」を夫婦で決めます。
2. **実家への探り**: それぞれが自分の親に対し、「お雛様どうしようか?」と軽く相談を持ちかけます。
3. **調整**: 両家の意向がバッティングした場合、パパが義実家へ、ママが実家へと、実の子供から調整に入ります。
特に「お顔」や「サイズ」の好みは世代間ギャップが出やすい部分。ここをクリアにするためにも、主導権はパパママが握ることが重要です。
3. 角を立てずに意向を伝える「魔法のフレーズ」
義実家から「うちで用意するわよ」と言われたけれど、実は自分たちで選びたい、あるいは母方が用意する予定がある場合。断り方に悩みますよね。そんな時に使える魔法のフレーズをご紹介します。
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**ケースA:自分たちで選びたい場合**
「お義母さん、ありがとうございます!実は、今の家のインテリアに合わせて、どうしても飾りたい作家さんのお雛様があるんです。一生に一度のことなので、私たち夫婦で選びに行かせてもらってもいいですか?」
**ケースB:母方が用意する場合**
「ありがとうございます!実は私の母も初節句を楽しみにしていて、どうしても贈りたいと張り切っているんです。お義父さんお義母さんには、ぜひ初節句のお食事会の時にお祝いしていただけると嬉しいです。」
ポイントは、相手の「祝いたい気持ち」を肯定しつつ、「別の形での参加」をお願いすることです。これは「プロキュアメント(調達)」ではなく、家族全員の「エンリッチメント(心の満足)」を満たすための交渉術です。
4. 「自分たちで買う」なら自社ブランド「ひなまり」を
最近増えている「資金援助だけ受けて、選ぶのは自分たち」というパターン。これなら両家の顔を立てつつ、本当に欲しいものが手に入ります。そこでプロとしておすすめしたいのが、私が監修する**「ひなまり」**シリーズや、コンパクトな木目込み人形です。
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昔ながらの大きな段飾りは、祖父母世代には豪華に見えますが、現代のマンションでは飾る場所や収納に困ることも。「ひなまり」のような、淡い色合いでコロンとしたフォルムのお雛様なら、リビングの棚や玄関にも飾れます。
「自分たちで選ぶ」ことの最大のメリットは、**「今の暮らしに愛着を持って馴染むもの」**を選べる点です。両家には「こんなに可愛いお雛様を選びました」と写真を送れば、きっと喜んでいただけますよ。
5. 補足:お祝い金と内祝いのマナー
最後に、お金に関するマナーの補足です。人形を買ってもらった、あるいは購入資金をいただいた場合のお返しについて。
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**基本は「食事会」がお返し**
初節句のお祝いとして、両家を招いて食事会を開くのが一般的です。これが「内祝い」の代わりとなります。
**遠方で食事ができない場合**
いただいた金額の1/3〜程度を目安に、「内祝い」として品物を贈ります。お子様の写真が入ったフォトフレームや、名入れのお菓子などが人気です。「お雛様と一緒に撮った写真」を添えるのが、何よりの親孝行になります。
形式にとらわれすぎず、お子様の健やかな成長を願う気持ちを全員で共有できる形を目指しましょう。


