「雛人形はメルカリや中古ショップで買ってもいいですか?」最近、こういったご相談をよくいただきます。節句人形アドバイザーとして、そして一人の親として、価格だけで判断する前に知っておいていただきたい「お守りとしての役割」と、写真には写らない「衛生面のリスク」について、包み隠さずお話しします。
なぜ雛人形は「一人一飾り」なのか
雛人形は単なるインテリア雑貨ではありません。生まれたお子様の「身代わり」となって厄災を引き受ける、一生に一度の「お守り」です。
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古来より、雛人形は持ち主の穢れ(けがれ)や災いを移す形代(かたしろ)としての役割を担ってきました。つまり、誰かが使った中古の雛人形には、その前の持ち主の厄が移っていると考えられています。
「誰かの厄を引き継ぐ」ことになりかねないため、基本的には姉妹であっても共有せず、一人ひとりに新しいお守りを用意するのが伝統的な考え方です。この「精神的な衛生面」こそが、私が中古をおすすめしない最大の理由です。
写真では見えない「衛生リスク」
精神論だけでなく、物理的な「衛生面」でも注意が必要です。メルカリなどのフリマアプリで見る写真は綺麗に見えても、実物には経年劣化が潜んでいます。
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特に注意したいのが以下の3点です。
1. **ダニやカビの胞子**: 人形の衣装や髪の毛、収納箱には、長年の保管でダニや目に見えないカビが付着している可能性があります。免疫力の低い赤ちゃんが触れるものとして、これは大きなリスクです。
2. **防虫剤の残留臭**: 古い人形特有のナフタリン臭は、一度つくと取れません。
3. **接着剤の劣化**: 昔の接着剤は経年で脆くなり、飾った瞬間に部品がポロリと取れることも。
これらは画面越しでは絶対に確認できないポイントです。
部品がない?保証なきトラブル
正規店以外での購入、特に個人間取引で最も多いトラブルが「配送事故」と「欠品」です。
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雛人形は非常に繊細な工芸品です。プロは専用の梱包材と技術で発送しますが、素人梱包では配送中に首が折れたり、小道具が破損したりするケースが後を絶ちません。
また、「届いてみたらお殿様の笏(しゃく)がない」「ぼんぼりが点灯しない」といった不備があっても、メーカー保証は適用外です。修理を依頼しようにも、古い部品は廃盤になっていることが多く、結局高くついてしまうことも。安物買いの銭失いになりかねないのが、中古市場の現実です。
予算重視なら「小さくても新品」を
「それでも予算が厳しくて…」というお気持ち、痛いほどよく分かります。ですが、誰かの厄がついた豪華な中古品より、コンパクトでも「その子のための新品」を用意してあげる方が、親御様の想いは真っ直ぐに伝わります。
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最近では、5万円〜でも、職人が手掛けた本格的でモダンな雛人形がたくさんあります。例えば、弊社の「ひなまり」シリーズのような木目込み人形や、ケース入りであれば、場所も取らず、予算も抑えられます。
また、どうしても人形が難しい場合は、「つるし雛」や「名前旗」だけでも十分立派な節句のお祝いになります。大切なのは大きさや豪華さではなく、「あなたのために用意した」というエンリッチメント(心の豊かさ)なのです。
どうしても譲り受ける場合の作法
最後に、ご実家から代々受け継ぐ場合など、どうしても中古(お下がり)を飾る場合の作法について補足します。
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この場合は、単に「モノ」として受け取るのではなく、以下の手順を踏むことをお勧めします。
1. **供養とお祓い**: 神社やお寺で「人形供養」や「お祓い」を受け、前の持ち主の厄を一度リセットする。
2. **新品の追加**: 人形はそのままでも、例えば「桃の花」や「新しいお道具」を一つ買い足し、新しい命への願いを込める。
形はどうあれ、そこに「お子様の幸せを願う心」が宿っていることが何より大切です。迷った際は、ぜひ私たち専門店にご相談ください。


