「来年箱を開けたら虫食いやシミが…」そんな悲劇を防ぐため、保管環境は非常に重要です。現代の気密性の高い住宅やクローゼット収納に合わせた、ニオイ移りしない最新の防虫剤選びと、プロが実践する保管テクニックを成嶋が解説します。
1. 「衣類用」はNG?人形専用防虫剤を選ぶべき理由
お人形の保管で最も大切なのは、お顔や衣装を美しく保つことです。よく「タンスの防虫剤が余っているから」と衣類用を流用される方がいらっしゃいますが、これはプロとしてはおすすめできません。
…….
雛人形、特に伝統的なお人形には、絹(シルク)や和紙、そして金箔や真鍮などの金具が使われています。衣類用の防虫剤の中には、これらの素材と化学反応を起こし、金具を錆びさせたり、プラスチック部分を溶かしたりする成分が含まれていることがあります。
一番大事なことは適正量を入れてください。1箱、だいぶいっぱい入っててもったいないから、全部使っちゃおうみたいなことこうするとかえってダメになってしまいます。
必ず「人形用」と明記されたものを選びましょう。これらはデリケートな素材への影響を最小限に抑えるよう調整されています。「エンリッチメント」の観点からも、大切なお守りであるお人形には、専用のケア用品を用意してあげるのが愛情です。
2. あの独特なニオイはもう古い?現代の主流は「ピレスロイド系」
昔のお雛様といえば、箱を開けた瞬間に広がる「ナフタリン」や「樟脳(しょうのう)」の独特な香りを思い出す方も多いでしょう。しかし、現代の住宅事情、特に気密性の高いマンションやクローゼット収納において、あの強いニオイは衣類への「ニオイ移り」の原因となり敬遠されがちです。
…….
現在、私たち専門店が推奨しているのは「ピレスロイド系」と呼ばれる防虫剤です。
・**無臭であること**:収納している他の衣類やバッグにニオイが移りません。
・**効果が安定している**:カビよけ成分が配合されているものも多く、多機能です。
「ひなまり」のような現代的なインテリアに馴染むお人形をお持ちの若い世代の親御様には、迷わずこの無臭タイプをおすすめしています。
写真のように、桐箱に仕舞うのも良いですし。ホームセンターにある衣装用の収納ケースなどに、湿気などで穴を開けてしまっても良いでしょう。商品についてきた段ボールも意外と通気性と吸湿性に優れているので、優秀な保管箱と言えます。
3. 成分は上から下へ広がる。箱の中での「正しい配置」
防虫剤を買っても、入れ方を間違えては効果が半減してしまいます。防虫成分は揮発してガスとなり、空気より重いため「上から下へ」広がっていく性質があります。
…….
**【鉄則の配置】**
お人形を薄紙(顔紙)や布で包んだ後、防虫剤は**「お人形の一番上」**に乗せてください。お人形の下に敷いてしまうと、成分がお人形全体に行き渡りません。
また、直接お人形の肌や衣装に触れないよう、必ず個包装のフィルムのまま、あるいは和紙に包んで置くのがポイントです。お顔に直接触れると、化学変化でシミの原因になることがありますのでご注意ください。
4. 絶対NG!種類の違う防虫剤の「併用」はシミの元
「念には念を」と、去年残った防虫剤と新しく買った防虫剤を混ぜて使ったりしていませんか?これは非常に危険です。
…….
防虫剤には主に4つの種類(ナフタリン、樟脳、パラジクロルベンゼン、ピレスロイド系)があります。これらを混ぜて使うと、化学反応を起こして薬剤が溶け出し、お人形に油のようなシミ(薬剤による溶解)を作ってしまうことがあります。
特に、おばあちゃんから受け継いだお人形などで、昔の樟脳のニオイが残っている箱に、新しいナフタリンを入れる…といったケースは要注意です。基本的には**「1種類に統一する」**、もしくは**「他の薬剤と併用可能」と書かれたピレスロイド系**を使用してください。
5. 湿気対策も忘れずに。来年のための「メモ」活用術
最後に、虫と同じくらい大敵なのが「湿気(カビ)」です。クローゼットや押入れは湿気が溜まりやすいため、人形用防虫剤と一緒に「人形用調湿剤(乾燥剤)」を入れることを強くおすすめします。防虫剤と調湿剤は併用しても問題ありません。
…….
**【プロからのワンポイント提案】**
収納箱の一番上に、**「来年の自分へのメモ」**を入れておきましょう。
・「お殿様は右側、お姫様は左側」
・「この小道具はここに入れた」
・「防虫剤は〇〇を使用した(有効期限〇〇まで)」
スマホで収納状態の写真を撮り、プリントアウトして入れておくのもスマートです。このひと手間で、来年の飾り付けが劇的に楽になり、心の余裕(エンリッチメント)につながりますよ。


