「見た目は似ているのに、なぜ価格が倍以上違うの?」そんな疑問に、製造から販売まで手掛けるプロが正直にお答えします。価格差の正体は「素材」と「手間」。予算ごとの特徴を知り、単なる高い安いではなく、ご家族にとっての「心の豊かさ(エンリッチメント)」に繋がる一台を見つけましょう。
価格を決める「3つの要素」とは
雛人形の価格は、主に「お人形本体(お顔・衣装)」「台・屏風」「お道具」の3要素のグレードで決まります。……………………………………………………………………..
まず衣装。最高級の「正絹(シルク)」か、発色の良い「化学繊維」か。また、高級な西陣織の帯地をそのまま使うか、プリント生地かでも価格は大きく変わります。正絹にもランクがありますし、化学繊維にもその上に刺繍を重ねるのか、金彩を重ねるのかなどで、いわゆる二次加工で価格が大きく変わってきます。
次に仕立て。「本着せ」と呼ばれる、実際に着物を着せ付ける技法は手間がかかるため高価になります。
そして意外と見落としがちなのが、台やお道具。木製で漆塗りの道具は、プラスチック製とは重厚感が全く異なります。
これらが組み合わさることで、5万円〜数十万円という価格幅が生まれるのです。
【5〜10万円】機能性とデザインの両立
この価格帯は、アクリルケース入りやコンパクトな親王飾りが中心です。現代の住宅事情に合わせた「飾りやすさ・しまいやすさ」という機能的価値が高いのが特徴です。
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衣装は化学繊維が主流ですが、最近は技術の向上で非常に見栄えが良くなっています。また、私が手掛ける「ひなまり」のような木目込み人形であれば、この予算内でもデザイン性の高い、インテリアに馴染む上質なセットが見つかります。ひなまりの衣装はすべて京都の西陣織で、お顔は石膏による職人の手作りの本頭。髪の毛もナイロンでなく細い正絹で紡いでおります。
コストを抑えつつも、お顔の可愛らしさや全体の雰囲気を重視する方におすすめのゾーンです。
【15〜20万円】選択肢が広がるボリュームゾーン
最も多くの種類から選べるのがこの価格帯です。「収納飾り」や、三段飾りなどの段飾りも視野に入ってきます。お人形のサイズも一回り大きくなり、存在感が増します。
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このクラスになると、著名な作家によるものであったり、衣装に刺繍が増えたりと「こだわり」が見え始めます。久月や吉徳といった有名ブランドの標準的なモデルも多くラインナップされており、品質と価格のバランスが取れた、失敗の少ない安心のゾーンと言えるでしょう。
人形ケースと違って、親王飾りや収納飾りなど、雛人形が外に出ているお飾りは手にとってその手触りや、手にしっくりくる感じ、また背面などの裾の作りなどでも、大きくお値段が変わってきます。
逆に雛人形のケース飾りは、簡単にコンパクトに、お手頃に置きたいので、お人形の裾などはほとんど作りません。また、中の芯材も発泡系のウレタンなどが多く、とても軽くできています。接着するので、そういったところはしっかり作らずに簡略化されている分、お値段も安いのです。
お子様の将来を願う一生に一度の買い物で、どういうものを選ぶといいのか、ちゃんと考える必要があるわけです。
【30万円以上】伝統工芸品としての「資産価値」
ここは「伝統的工芸品」や有名作家の作品など、美術品としての価値を持つ領域です。衣装には本物の帯地(正絹など)が使われ、お殿様の手足も樹脂ではなく木製の手彫りになるなど、見えない部分まで本物を追求しています。
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お道具も「木製・本漆塗り・本金蒔絵」など、職人の技が光る逸品が揃います。単なるお節句飾りを超えて、孫の代まで受け継ぐことができる「資産」として考えたい方、あるいは「本物」に触れることでお子様の感性を育みたい(エンリッチメント)と願う方におすすめです。
予算内で満足度を高める「一点豪華」の提案
予算には限りがありますが、工夫次第で満足度は大きく変わります。プロからの提案は「メリハリ」をつけること。例えば、お人形本体は少しランクを下げても、豪華な刺繍入りの「名前旗」や「吊るし雛」を横に添えるだけで、全体の華やかさは格段にアップします。
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あるいは、台屏風をシンプルなものにして、その分ご予算をお人形(お顔と衣装)に集中させるのも賢い選び方です。全てを完璧にするのではなく、ご家族がどこに「豊かさ」を感じるかで予算を配分するのが、後悔しない秘訣です。


