「お雛様を片付ける」この行為は、単なる収納作業ではありません。お子様に「物を大切にする心」を伝える絶好の情操教育の機会です。人形屋ホンポの成嶋が、片付けを「お雛様の寝かしつけ」というストーリー仕立てにし、親子で楽しみながら感謝を伝える方法をご提案します。
1. 片付けは「長いお昼寝」の始まり
お子様にとって、華やかなお雛様が見えなくなるのは寂しいものです。そこで、片付けを「お別れ」ではなく「これから次の春まで、長いお昼寝をするんだよ」というストーリーにして伝えてあげましょう。
「お雛様は〇〇ちゃんが元気に過ごせるようにずっと見守ってくれていたから、少し疲れちゃったみたい。ゆっくり休ませてあげようね」
このように声をかけることで、子供の中に「お雛様=大切なお友達・守り神」という意識が芽生え、自発的に「休ませてあげたい」という優しい気持ちを引き出すことができます。これはエンリッチメント(心の豊かさ)を育む第一歩です。
2. 毛ばたきは「優しくナデナデ」
実際の作業にお子様を参加させる際、最初は「ホコリ払い」がおすすめです。付属の毛ばたきを渡し、「お雛様の背中や着物を、優しくナデナデしてあげてね」と教えます。
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・強くこすらないこと
・お顔には直接触れないこと
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この2点を「お約束」として伝えることで、慎重に物を扱う所作が身につきます。私たちプロも、お人形を扱う時は常に「我が子」のように接します。お子様が一生懸命ホコリを払う姿は、お雛様への感謝そのものです。
3. お顔を包む「魔法のお布団」
雛人形の収納で最も重要なのが、お顔の保護です。お顔に白い紙(面紙)やティッシュを巻く作業は、子供には少し難しいかもしれませんが、見せてあげることに意味があります。
「お顔が傷つかないように、ふわふわの『魔法のお布団』をかけてあげるんだよ」
そう説明しながら、大人が丁寧に包んで見せてください。「ひなまり」のような現代的なお人形でも、お顔は命。この工程を見せることで、繊細なものを守る大切さを視覚的に教えることができます。もし可能なら、最後にお子様にテープを貼ってもらうなど、役割分担をするのも良いでしょう。
4. 箱にしまう時の「おやすみなさい」
お人形を箱に収め、防虫剤を入れる時は「来年も元気に会うための『お薬』とお『守り』だよ」と伝えます。そして箱の蓋を閉める瞬間こそが、儀式のクライマックスです。
親子で一緒に手を合わせ、「守ってくれてありがとう。また来年ね、おやすみなさい」と声をに出して言いましょう。
この「言葉に出す」行為が記憶に定着します。暗くて涼しい場所(押入れなど)にしまう際も、「ここは涼しくてよく眠れる場所なんだよ」と教えれば、子供はお雛様が大切に保管されていると安心します。
5. ぽっかり空いた場所の飾り方
お雛様を片付けた後、飾っていた場所がぽっかり空いて寂しく感じることがあります。ここを「寂しい場所」にしないのが、成嶋流のエンリッチメントです。
お雛様の代わりに、春の訪れを告げる「桃の花」や「菜の花」を一輪飾ってみたり、お子様が描いたお雛様の絵を飾ってみてはいかがでしょうか。
「お雛様は寝ちゃったけど、春が来たね」と季節の移ろいを感じるスペースとして活用することで、来年の節句を待つ楽しみが持続します。伝統行事は、片付けた後も心の豊かさとして続いていくのです。


