毎年ひな祭りの時期に飾る雛人形。大切にしているからこそ、長く美しい状態で保ちたいものですよね。でも「虫に食われてしまった」「カビが出ていた」なんて声も少なくありません。
雛人形は木や布、紙などの天然素材を使用しているため、とてもデリケート。適切な対策を取らないと、保管中に虫害やカビが発生するリスクがあります。
この記事では、節句人形アドバイザーの資格を持つ「人形屋ホンポ」代表・成嶋祐介が、雛人形の防虫対策に焦点を当ててお手入れ方法と注意点ををやさしく解説します。
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雛人形にどうして防虫対策と湿度対策が必要なのか
雛人形は、ただの飾りではなく、大切な思い出と願いが込められた特別な存在。だからこそ長く美しく保つためには、保管環境に配慮する必要があります。
実は雛人形に使われている素材の多くは、虫にとって栄養源となるものばかり。例えば、絹や綿といった衣装の布、髪に使われる天然素材、でんぷんを含む糊などは、虫が寄ってきやすい要因になります。
さらに、湿気がこもると別の問題も。衣装にシミができたり、台座や装飾にカビが生えたりと、見た目や衛生面にも悪影響を及ぼします。湿度が高いと虫の活動も活発になるため、防虫と湿気対策はどちらも欠かせません。
このような理由から、片付ける前のお手入れや保管方法を工夫することが、雛人形を守るカギとなります。
雛人形の防虫対策|飾り終えたあとのお手入れ
やさしくホコリを取り除こう
片付け前には、乾いたやわらかい布や筆、はたきで丁寧にホコリを払います。強くこすらず、なでるように扱うのがポイントです。顔まわりや衣装の細かい部分まで丁寧に。
このお手入れには見た目を整えるだけでなく、虫やダニの原因となるホコリを除去する役割もあります。中には、すでに産みつけられていた虫の卵を取り除けることもあり、非常に大切な作業です。
また、雛人形をお手入れする際は、素手で触らないように気をつけましょう。とくにお顔部分は皮脂に弱く、シミやくすみの原因になります。お手入れや移動の際は白手袋を使用するのがおすすめです。
陰干しで湿気をオフ
晴れた日には風通しの良い場所で半日ほど陰干しを。直射日光は色褪せの原因になるため、カーテン越しの光や日陰を選びましょう。
雛人形の防虫対策|保管方法を見直そう
防虫剤・乾燥剤を適切に使用
衣類用ではなく、人形専用の防虫剤がおすすめ。無臭タイプならにおい移りの心配もありません。湿気対策には乾燥剤(シリカゲルなど)の併用を。
防虫剤は「たくさん入れれば安心」と思いがちですが、入れすぎは逆効果。匂いが強く残ったり、気化した成分が結晶となって人形に付着することもあります。
また、防虫剤には様々な成分の種類があり、違うタイプを混ぜると化学反応を起こして有害物質が発生したり、素材に悪影響を与えることもあります。同じ種類を継続して使うのが安心です。防虫剤を切り替える場合も、以前の成分が残っている可能性があるため注意しましょう。
使用前にはパッケージに記載された説明をよく読み、用法・用量を守ることが基本です。
収納ケースの選び方
段ボールなどは湿気を吸いやすく、防虫には不向き。桐箱や不織布ケースなど、湿度調整に優れた素材の収納箱を選びましょう。
完全密封だと湿度がこもりカビの原因になる可能性があるため、ほどよく通気できる構造のケースが理想です。通気性を保ちながら虫やホコリを防ぎます。
保管場所にも注意
押し入れの上段やクローゼットの棚上など、直射日光や床の湿気から遠い場所がおすすめ。冷暖房の風が直接当たる場所は避けましょう。
雛人形の防虫対策|飾っている期間も油断しない
日頃の換気と湿度管理
飾っている間も湿気には要注意。とくに冬から春にかけては気温差で結露が起こりやすい時期です。1日1回は空気の入れ替えを意識しましょう。
食べこぼしやホコリにも気をつけて
人形の近くで食事をしたり、お子さまやペットが遊ぶと、知らぬ間に虫が寄る原因になることも。定期的に掃除をして清潔を保つことが大切です。
ケース飾りも完全ではありません
最近は、お片付けがしやすい「ケース飾り」や「収納飾り」雛人形も人気です。収納スペースが限られているご家庭にもぴったりです。
ただ、アクリルケースなどで覆われたタイプの雛人形も、虫害ゼロとは限りません。ケースのわずかな隙間から侵入してしまうことがあるため、防虫剤を設置するなどの対策が必要です。
▶ 雛人形のケース飾りを見る
万一、雛人形に虫やカビが…
「気づいたら虫に食われていた…」そんなときは自己判断せず、購入店やメーカーに相談を。多くの人形店やブランドでは、修理・メンテナンスのサービスを提供しています。
まとめ|雛人形の防虫対策で毎年きれいに飾ろう
・ホコリや湿気を取り除いてから収納する
・人形専用の防虫剤・乾燥剤を正しく使う
・収納箱や保管場所も選び方がポイント
・ケース飾りも油断せず対策を
・トラブルがあったときは購入先へ相談を
こうした対策を取り入れれば、毎年安心して雛人形を飾ることができます。お子さまの成長を祝う大切な行事を、いつも清潔で美しいお雛様とともに迎えたいですね。


