人形屋ホンポの成嶋です。「雛人形は早く片付けないと」と思っていませんか?実はこれ、湿気対策の教えが変化した迷信とも言えます。現代の空調管理されたリビングなら、アートのように一年中愛でる「出しっぱなし」スタイルも素敵です。心の豊かさ(エンリッチメント)につながる、インテリアとしての新しい雛人形の楽しみ方をご提案します。
「婚期が遅れる」は気にしなくてOK
まず、皆様が最も気にされる「早く片付けないと婚期が遅れる」という言い伝えについて。これは、旧暦のひな祭りが現在の梅雨時期にあたり、湿気で人形が傷むのを防ぐための「しつけ」としての意味合いが強かったのです。……………………………………………………………………………………….
しかし、現代の住宅事情は気密性が高く、空調で湿度管理もされています。プロの視点から申し上げれば、直射日光と過度な湿気さえ避ければ、一年中飾っていても人形へのダメージは最小限に抑えられます。むしろ、押し入れの奥でカビさせてしまうより、毎日お顔を見て愛でてあげることこそが、最高の人形供養であり、情操教育にもつながると私は考えています。
ミンロン社製 ポーセリン雛 磁器雛人形
「立ち雛」こそアートの極み
365日飾るなら、従来の「段飾り」ではなく、より造形美を意識した「立ち雛(たちびな)」や「親王飾り」がおすすめです。特に立ち雛は、お殿様とお姫様の衣装のラインが美しく、まるで彫刻のような佇まいを持っています。
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弊社オリジナルの「ひなまり」シリーズでも取り入れていますが、伝統的な金襴だけでなく、現代的なテキスタイルや優しい色味の木目込み人形を選ぶことで、季節行事の枠を超えた「インテリアアート」として昇華されます。見るたびに心が華やぐ、そんな一品をお選びください。
撮影商品

インテリアに馴染む素材選び
リビングに常設する場合、「違和感のなさ」が重要です。煌びやかな金屏風や黒塗りの台座は、時として日常のインテリアと喧嘩してしまうことがあります。
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そこでおすすめなのが、ナチュラルな木目の台座や、アクリル、ガラス、あるいはファブリックパネルを背景にしたセットです。北欧家具やモダンな内装に調和させるなら、淡いベージュやグレー、パステルカラーを基調としたデザインが最適。「和」を強調しすぎない、ニュートラルなデザインが、通年飾れるアート雛の条件です。
季節ごとの「しつらえ」を楽しむ
雛人形を出しっぱなしにする場合、周りのディスプレイで季節感を演出するのが「通」の楽しみ方です。3月は桃の花を添えて伝統的に。夏はガラスの器や涼しげな敷布を合わせて涼を演出。秋はドライフラワーや木の実を、冬は和紙の照明で温かみをプラス。
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人形自体は変わらなくても、周囲の「しつらえ」を変えることで、リビングのメインオブジェとして四季折々の表情を見せてくれます。これは単なる装飾ではなく、生活の中に美を取り入れる「エンリッチメント」の実践でもあります。
美しさを保つケアとケースの活用
最後に、一年中飾る上での実務的なアドバイスを。最大の敵は「埃(ホコリ)」です。繊細な着物や髪に埃が積もると、どうしても劣化の原因になります。
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アートとして飾るなら、透明度の高いアクリルケースやガラスケース入りのものを選ぶか、定期的に羽根はたきで優しくケアをする習慣をつけましょう。最近は、枠のないパノラマケースなど、遮蔽感を感じさせないスタイリッシュなケース飾りも増えています。美しさを守りながら楽しむ、それが大人の雛人形の嗜みです。


