鯉のぼりの一番上で、風にたなびく「吹き流し」。なんとなくセットの一部として見ている方も多いかもしれませんが、実はとても意味深く、大切な飾りなんです。
この記事では、節句人形アドバイザーの資格を持つ「人形屋ホンポ」代表・成嶋祐介が、吹き流しの由来や意味、色のいわれ、選び方やお手入れのポイントまでをやさしく解説します。鯉のぼりを飾る時間がより特別なものになるはずです。
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鯉のぼりの吹き流しとは?
吹き流しとは、鯉のぼりのいちばん上に取り付けられる、細長い布状の飾りのこと。青・赤・黄・白・黒など五色に彩られ、風を受けて優雅にたなびく姿が特徴です。
「鯉」そのものよりも前に風を受ける存在として、鯉のぼり全体を彩る象徴的な役割を担っています。
吹き流しの由来と意味
吹き流しのルーツは、戦国時代の「のぼり旗」にもつながるとされており、魔除けや厄除けの意味を持つ飾りとして受け継がれてきました。
特に使われている五色(青・赤・黄・白・黒)は、中国の思想「五行説(木・火・土・金・水)」に由来し、自然のエネルギーを取り込むための配色とされています。
併せて知りたい!矢車の意味
吹き流しとともに飾られることの多い「矢車(やぐるま)」にも、実はしっかりと意味があります。
矢は「魔を射る」とされ、回転することで厄を祓う役割があると信じられてきました。また、風の流れを受けて動くことから、子どもに良い気を運び、運気を導いてくれる象徴とも言われています。
それぞれの意味や役割を知っておくことで、どんな飾り方でも気持ちを込めて楽しめますよ。
吹き流しの色の意味
吹き流しに使われる5色には、それぞれに深い意味があります。
- 青(緑)…木の気:自然や健康、長寿への願い
- 赤…火の気:生命力や情熱、魔除け
- 黄…土の気:豊かさ・安定・家庭円満
- 白…金の気:清らかさ、無病息災
- 黒(または紫)…水の気:知恵・冷静さ・強さ
この5色すべてを使うことで、自然界のすべてのエネルギーを受け取り、災いを遠ざけるという考え方があるんです。
吹き流しの種類と選び方
最近では、吹き流しにもさまざまなデザインや素材が登場しています。目的や飾る場所に合わせて、お気に入りを選びましょう。
伝統的な五色吹き流し
昔ながらの五色で構成された定番デザイン。家紋入りや、ちりめん・高級織など、格式を感じる一品も多くあります。
モダンなシンプルデザイン
ナチュラルカラーや単色づかいで、洋風住宅にも合わせやすいタイプも増えています。シンプルだけどおしゃれに飾りたい方におすすめです。
子どもが喜ぶ柄入りタイプ
虎や龍など勇ましい柄や、動物・花などのかわいらしい絵柄入りも人気。吹き流しにも遊び心を取り入れられます。
家紋・名前入れオプションの選び方
特別感を高めたい方には、吹き流しへの家紋・名入れオプションもおすすめです。
家紋入り吹き流し
ご家庭の家紋を中央に刺繍・プリントすることで、節句の伝統や誇りを感じる演出に。ご両親や祖父母からのリクエストで選ばれることも多いですよ。
名前入りの吹き流し
お子さまの名前を入れる名入れ吹き流しも、初節句の記念品として人気。兄弟姉妹で色を変えたり、書体や色を選べるタイプもあります。
吹き流しの飾り方とお手入れ
飾る順番と取り付け位置
鯉のぼりを飾るときは、上から順に「矢車 → 吹き流し → 鯉のぼり」という順番が基本です。
吹き流しは、鯉のぼりよりも風を先に受けることで「悪いものを払う」という役割も担っています。
取り付けの際は、矢車やポールとの接続部をしっかり確認しましょう。ポールの高さや風向きに合わせて長さやバランスを調整すると、見た目も美しくなります。
飾る場所の選び方
屋外の場合は、風通しのよいスペースかつ障害物がない場所が理想です。電線や木の枝などに絡まないように注意しましょう。
ベランダや室内で飾る場合は、吊り下げ式やスタンド式のコンパクトタイプが便利。カーテンレール、天井フック、突っ張り棒などを使って、お部屋でも手軽に楽しめます。
吹き流しを飾る時期とタイミング
一般的には、4月上旬〜中旬に飾り始めて、5月5日の端午の節句までが目安。風が強い地域では、悪天候の日は巻き上げる・取り込むなどして、生地を傷めないよう工夫するのがポイントです。
使用後のお手入れと収納
節句が終わったら、湿気や汚れをそのままにせず、丁寧にケアしてから収納しましょう。
- 汚れがある場合は、やわらかい布でやさしく拭き取る(素材によっては軽い水洗いもOK)
- しっかりと陰干しして、完全に乾かす
- シワを防ぐため、折り目がつかないようにふんわり巻いて収納
- 収納袋や箱には、乾燥剤(シリカゲルなど)・防虫剤を入れて湿気と虫の対策を
名入れ・家紋入り吹き流しのお手入れ注意点
刺繍やプリントが施された吹き流しは、こすらず、部分的にやさしく拭くようにしましょう。刺繍糸のほつれや変色を防ぐためにも、直射日光や高温多湿の場所での保管は避けてください。
お子さまの成長の記録としても思い出深い存在になるので、ていねいにお手入れして長く楽しんでいきましょう。
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まとめ|吹き流しにも想いを込めて
吹き流しは、子どもの無事と成長を願う「祈りの飾り」。
ただの布ではなく、風と一緒に、家族の想いを空へ届けてくれる存在です。
ぜひ由来や意味も知ったうえで、今年の節句を心あたたかく迎えてくださいね。


