「私の古い雛人形、使ってくれない?」という実家・義実家からの提案。有難いけれど、本音は「娘のために新しい今の雛人形を選びたい」。節句人形アドバイザーの成嶋が、伝統的な「厄代わり」の意味合いや現代の住宅事情を味方につけ、関係を壊さずにスマートに新品を迎えるための交渉術を伝授します。
本来の意味は「一人一飾り」。お守りの役割を伝える
最も角が立たず、かつ伝統に基づいた正当な理由は「雛人形は子供の身代わりとなるお守りだから」という点です。
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雛人形には、生まれたお子様に降りかかる災厄を代わりに引き受けてもらう「形代(かたしろ)」としての役割があります。つまり、お母様の雛人形は、お母様の災厄を長年引き受けて守ってくれたもの。
「わたしを守ってくれたお人形の役目は終わっていないから、この子にはこの子専用の新しいお守りを用意してあげたいんです」
このように伝えることで、相手への敬意を払いつつ、新品を購入する必然性を説明できます。これは私が店頭でお客様に最もおすすめしている「魔法のフレーズ」です。
「飾る場所がない」は物理的かつ最強の理由
30年前の雛人形と現在の雛人形では、サイズ感が劇的に異なります。かつての主流は幅100cmを超える7段飾りや3段飾りでしたが、現代の住宅事情では飾る場所を確保するのが困難です。
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「頂いたとしても、飾れる場所がなくて押し入れにしまいっぱなしになってしまうのが申し訳ない」
と、物理的な制約を理由にするのも効果的です。特にアパートやマンション住まいの場合、玄関の靴箱の上やリビングのサイドボード(奥行30cm〜40cm程度)が主な設置場所になります。
「今の家には、この棚に乗るコンパクトなサイズしか置けないんです」と具体的な寸法を示すことで、古い大型セットのお下がりを自然に回避できます。
修理・維持費用の「現実」を相談する
お下がりのお人形は、一見綺麗に見えても経年劣化が進んでいることが多いです。お顔のシミ、着物の虫食い、道具の欠損など、これらを修理して飾れる状態にするには、実は新品を買うのと変わらない費用がかかることもあります。
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「お母さんの人形を大切にしたいからこそ、中途半端な状態で飾るのは可哀想。でも、しっかり修理すると〇〇万円くらいかかるみたい…それなら、その予算でこの子に新しいものを買ってあげたほうが、お人形も喜ぶかも」
というように、経済合理性と人形への愛情をセットにして相談してみましょう。「修理代」という現実的な数字を出すことで、相手も「それなら新品の方が良いね」と納得しやすくなります。
「ひなまり」等で別腹提案。実家と自宅で使い分け
どうしても断りきれない、あるいは義実家の顔を立てたい場合は、「共存」という道もあります。
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「お母様のお人形は、ぜひお正月に実家へ帰省した際に飾って見せてください。自宅では、普段のインテリアに合うコンパクトな雛人形や木目込み人形(ひなまり等)を飾ります」
という提案です。これなら、豪華な旧来の人形は実家の広い和室で日の目を見ることができ、自宅には自分好みのモダンな人形を置くことができます。
特に弊社の「ひなまり」シリーズのような、丸くて愛らしい木目込み人形は、伝統的な衣裳着人形とは全くテイストが異なるため、「別物」として認識されやすく、両方あっても違和感がありません。
Supplements: どうしても受け取る場合の対処法
最終的に断りきれず受け取ることになった場合や、既に受け取ってしまった場合の対処法です。
1. **人形供養を利用する**: 全てを飾るのではなく、特に傷みの激しいお道具や台座などは感謝を込めて供養(お焚き上げ)に出し、お殿様とお姫様だけをコンパクトにリメイクして飾る方法もあります。
2. **ケースだけ買い替える**: 人形自体はそのままでも、最新のモダンなガラスケースや、おしゃれな屏風・台座だけを新調することで、古臭さを消して現代風にアレンジできます。
3. **寄付という選択**: 地域の保育園や施設、海外への寄付を行っている団体もあります。「多くの人に見てもらえる場所へ」という形での手放し方も一つの愛情です。
大切なのは、ママ・パパが「飾りたい」と思えるかどうか。無理をして飾らなくなるのが、お人形にとって一番悲しいことですから。


