初節句を迎えるお子さまのために、五月人形を準備しようと思っているけれど、何を選べばいいのか分からない…そんな声をよく耳にします。
五月人形は、子どもの健やかな成長と無事を願って飾られる、日本の伝統行事の大切なアイテムです。
この記事では、節句人形アドバイザーの資格を持つ「人形屋ホンポ」代表・成嶋祐介が、五月人形の意味や歴史、選び方のポイントまでをやさしく解説します。
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五月人形とは?端午の節句に飾る理由
五月人形は、男の子の健やかな成長と幸せを願って5月5日の「端午の節句」に飾る伝統的な飾り物です。
現在は主に男の子の初節句に贈られることが多く、「兜」や「鎧」、「子供大将」など、武士にまつわるモチーフが人形として表現されています。その理由は、日本の歴史と深く関わっているんです。
もともと端午の節句は、古代中国から伝わった「厄除けの日」が起源とされています。日本でも平安時代には、病気や災いを祓うために菖蒲(しょうぶ)を飾ったり、薬湯に入ったりする風習がありました。武士の時代になると、この「菖蒲」が「尚武(しょうぶ/武を重んじる)」と同じ音であることから、男の子の節句として定着したのです。
その流れの中で、「命を守る象徴」である武具――兜や鎧が、人形として飾られるようになりました。さらに江戸時代以降は、実際の武具ではなく、ミニチュアや人形の形に変化し、庶民の家庭にも広く広がっていきました。
現代でも、五月人形を飾ることには多くのメリットがあります。
- 家族の絆を感じられる行事になる:子どもを思う気持ちを形にして伝える機会になります。
- 子どもに日本の文化を伝えられる:伝統行事にふれることで、季節の移り変わりや家族の歴史を感じられます。
- 成長を記録するイベントにも:毎年、同じ飾りを出し、写真を撮ることで、子どもの成長を実感できます。
また、兜や鎧は「身を守る」象徴として、現代の暮らしでも「災いから守る」「健やかに過ごす」という願いを込めることができます。デザインも伝統的なものから現代風のコンパクトなタイプまでさまざまなので、お住まいやご家族の好みに合わせて選ぶ楽しみもありますよ。
五月人形の起源と歴史
武士が活躍した時代、男の子の誕生や成長を祝う際に、兜や刀などを贈る風習がありました。それが江戸時代に入り、庶民にも広がるなかで、人形文化と融合し、現在の五月人形の形になったといわれています。
当時の価値観では、“強く賢く育つ”ことが親の願い。その思いが、武具をかたどった人形に託されたのです。
五月人形のお下がりはできる?
おじいちゃんや親戚から譲り受けた五月人形を飾っても良いの?と悩む方も多いですよね。
実は、五月人形のお下がりは可能です。ただし、「もともと誰かを守るための人形」だったことを踏まえて、気持ちよく引き継ぐことが大切とされています。
保管状態や清掃の有無などを確認し、飾る前に丁寧にお手入れすることで、代々大切に使い続けることもできます。
飾る時期・お手入れ・しまい方
飾る時期
一般的には、4月上旬〜中旬に飾り始めます。遅くともゴールデンウィーク前までに飾ると、節句の雰囲気も高まります。
飾る場所
直射日光や湿気を避け、安定した棚やリビングの目立つ場所が安心です。小さなお子さまやペットの手が届かない場所を選びましょう。
片付け・保管
- やわらかい布でほこりを優しく拭き取る
- 風通しの良い場所で陰干しして湿気を飛ばす
- 乾燥剤や防虫剤を添えて元箱に収納する
五月人形をもっと楽しむアイデア
飾って終わりではなく、家族で楽しむ工夫を加えると、節句がもっと思い出深いものになります。
- SNSやアルバムで記念写真を残す
- 鯉のぼりや和菓子と一緒に飾りつけ
- 飾り付けをお子さまと一緒に楽しむ
まとめ|五月人形は子どもを守る温かい文化
五月人形は、鎧兜や子供大将の姿を通じて、「子どもを災いから守りたい」「立派に育ってほしい」という親の願いを形にした日本の伝統文化です。
時代が変わっても、その想いは変わりません。住まいや家族のスタイルに合わせて、自分たちらしい五月人形を見つけてみてください。
「五月人形の兜について解説」記事や、「兜と鎧の違いを解説」記事もぜひあわせてご覧ください。

